概要
2026年3月31日、陸上自衛隊は熊本県の健軍駐屯地に改良型12式地対艦誘導弾(25式)を配備し、日本初の長距離ミサイル運用を開始した。射程は従来の約200kmから1,000km超へと飛躍的に拡大され、中国本土を含む東シナ海全域をカバーする「スタンドオフ防衛能力」が実現した。同日、静岡県のキャンプ富士には極超音速滑空弾(HGV)も配備され、戦後日本の安全保障政策は歴史的な転換点を迎えている。

配備されたミサイルシステム
今回配備された25式ミサイルは、三菱重工業が開発・製造を担う改良型12式地対艦誘導弾である。従来型の射程約200km(125マイル)から約1,000km(620マイル)へと大幅に延伸され、敵のミサイル基地を遠距離から攻撃する「スタンドオフ」能力を獲得した。
- 改良型12式(25式): 射程約1,000km、健軍駐屯地(熊本県)に配備。東シナ海全域と中国本土の一部を射程に収める
- 極超音速滑空弾(HGV): 島嶼防衛用の新型兵器としてキャンプ富士(静岡県)に配備
- 米国製トマホーク巡航ミサイル: 射程約1,600km(990マイル)。2026年後半に護衛艦「ちょうかい」へ搭載予定。2028年までにさらに7隻への展開を計画
小泉進次郎防衛大臣は「日本の抑止力と対応力を強化するうえで、極めて重要な能力だ」と述べ、配備の戦略的意義を強調した。
「専守防衛」からの歴史的転換
日本は戦後、憲法9条のもとで「専守防衛」を国是としてきた。しかし今回の配備は、敵基地を攻撃する「反撃能力」の保有を意味し、冷戦期のソ連脅威に対する北方防衛態勢から、南西方面での中国の活動に対応する攻撃的抑止力への転換を示している。
高市早苗首相の内閣は、2026年度(4月開始)の防衛費として過去最大の9兆円超(約580億ドル)を承認した。反撃能力と沿岸防衛の強化が重点項目に据えられており、2028年3月までに北海道と宮崎にも追加配備が計画されている。
中国の海洋進出と地域安全保障
今回の配備が加速した直接的な背景には、中国の軍事活動の活発化がある。
- 空母の同時展開: 2025年6月、日本の離島付近で中国の空母2隻が同時に活動しているのが初めて確認された
- 南西諸島の要塞化: 近年、東シナ海に面する南西諸島の防衛強化が急速に進行
- 台湾有事への言及: 高市首相は2025年11月、中国による台湾への軍事行動が日本の軍事的対応を正当化しうると示唆
- 防衛省の新組織: 中国の太平洋における軍事活動を分析する専門部署が新設された
12式改良型の射程が中国本土に到達することは、日中関係に新たな緊張要因をもたらす可能性がある。一方、抑止力の強化により地域の安定に寄与するとの見方もあり、評価は分かれている。
地元住民の反応と課題
健軍駐屯地周辺では、住民による抗議活動が行われた。「地域の緊張をエスカレートさせ、潜在的な敵から標的にされるリスクが高まる」との懸念が表明されている。
長距離ミサイル配備は国家安全保障上の必要性と、基地周辺住民の安全・生活環境との間で難しいバランスを求められる。政府には丁寧な説明と、住民の不安に対する具体的な対応策の提示が求められるだろう。
今後の展望
日本の防衛力整備は今後さらに加速する見通しだ。2026年後半のトマホーク搭載開始、2028年までの北海道・宮崎への追加配備により、日本列島全域をカバーする多層的な打撃力が構築される。イラン情勢の緊迫化や米中対立の先鋭化といったグローバルな地政学リスクの高まりが、日本の防衛態勢転換をさらに後押しする可能性がある。
日本の防衛政策の転換は、防衛産業のサプライチェーンに直結する変化です。三菱重工業をはじめとする防衛関連企業の動向に加え、南西諸島を中心とする物流・通信インフラの整備需要にも注目が必要です。DX推進の観点では、防衛分野でのAI・自律技術の活用拡大が民生技術にも波及効果をもたらすと見られ、デュアルユース技術への投資判断が企業の競争力を左右するでしょう。